コラム:MDアンダーソンがんセンターでの体験と私のMission・Vision (医師:加藤編)

自分の軸を言葉にする難しさ

今回のJMeプログラムで最も印象的だったのは、自分のMissionとVisionを問い直す時間でした。日本で外科医として日々診療を行う中で、「患者の役に立ちたい」という思いは常にありましたが、それを具体的な言葉にして他者に伝える機会はほとんどありませんでした。MDアンダーソンでの研修では、毎週の講義やMentorとの対話を通じて、自分の原点を改めて見つめ直すことになりました。

Core Valueの共有から得た気づき

最初の週に行われた課題は、メンバー同士でCore Valueを共有することでした。アパートに戻ってお互いの価値観を語り合う中で、自分が大切にしてきたものが浮かび上がってきました。これまで漠然と抱いていた「合併症を減らしたい」「患者に食べる喜びを届けたい」という思いが、仲間との対話を通じて自分の中で明確な軸として形になっていったのです。

Mentorとの対話と整理のプロセス

毎週のMentor-Menteeミーティングでは、Bora Lim先生との1時間の対話を通して「あなたが社会に残したいインパクトは何か」という問いを投げかけられました。また、Janis先生の講義では“Playing to Win”という戦略的思考を学び、Impactをキーワードに自分のキャリアを整理する機会を得ました。苦労しながらも言葉にする過程で、自分のMissionとVisionは次第に輪郭を持ち始めました。

自分のMissionとVision

この研修を経て再確認した私のMissionは、「食道がんにより経口摂取困難な患者に対し、研究ベースの合併症の少ない手術で貢献する」 というものです。そしてVisionは、「すべての消化管がん患者が生涯通して食べることができる世界」 を実現することです。これらは研修前から心にあった思いですが、今回の経験によってより鮮明に、行動を方向づける指針として定着しました。

これからに向けて

MissionやVisionは立派な標語ではなく、日々の判断や行動を支える実践的な軸だと学びました。今後はSMART Goalsを立て、小さな成果を積み重ねながら、自分のMissionとVisionを定期的に見直し、進化させていきたいと考えています。この習慣は、生涯にわたりキャリアと人生を支えてくれると確信しています。


コラム執筆者紹介

加藤 大貴(外科医)
国立国際医療研究センター病院 外科にて食道外科医として日々の診療に携わる中で、チーム医療の在り方に課題を感じるようになった。よりよい医療の形を学びたいとの思いからJ-TOP Workshop 2019に参加し、その経験を経てJME2019に選抜され、MDアンダーソンがんセンターでの研修を経験。

Mission:「合併症の少ない食道がん手術で患者に貢献する」
Vision:「すべての消化管がん患者が生涯通して食べることができる世界」


JME(Japanese Medical Exchange Program)とは?

JMEプログラムは、J-TOP(Japan TeamOncology Program)が実施する海外研修制度です。
医師・看護師・薬剤師など、日本から選抜された多職種のメンバーが、米国のMDアンダーソンがんセンターやハワイがんセンターで数週間にわたり研修を行います。

現地では、診療の見学やレクチャーを通じて「患者中心のチーム医療」「キャリア形成」「リーダーシップ」を学び、さらに共同生活や最終プレゼンテーションを通じて国境や職種を越えたチームビルディングを体験します。

JMEで得られた経験は、帰国後に現場や教育の場で共有され、日本のがんチーム医療の発展に活かされていきます。