コラム:日本で感じていた課題と、現地で見えたヒント (医師:加藤編)
アメリカでの研修生活
私は現在、MDアンダーソンがんセンターでの研修に参加し、他職種のメンバーと同じアパートで生活しながらプログラムを受けています。日々の見学やディスカッションを通じて、改めて日本とアメリカの医療の違いを実感しています。
役割分担の明確さに驚く
日本では、外科医として診療・研究・教育を幅広く担うことが当たり前でしたが、その分一人に業務が集中し、他職種に任せる文化はまだ十分に根付いていないと感じていました。こちらでは、医師、看護師、薬剤師などの役割が明確に定められ、それぞれが専門性を発揮してチームを支えています。任せられることを信頼して託すことで、効率的かつ質の高い医療が実現しているのだと学びました。
患者を支える仕組みからの学び
ソーシャルワーカーが生活面や精神面にまで介入し、患者が治療に専念できる体制を整えている姿勢は特に印象的でした。医療は治療そのものだけでなく、患者を取り巻く環境全体を支える営みなのだと改めて教えられました。
Missionが組織を動かす力
「Make Cancer History」というスローガンを掲げ、組織全体でMissionとVisionを共有する姿も強く心に残りました。患者には希望を、職員には誇りと方向性を与える旗印となり、組織を一つにまとめている様子を実感しました。
日本へのヒント
今回の経験を通じて、日本の現場ですぐに同じ仕組みを導入することは難しいかもしれません。しかし「役割を明確にし、信頼して任せ合う」という基本は普遍的に応用できると確信しました。今後の診療の中で、ここでの学びを一つずつ形にしていきたいと思います。
コラム執筆者紹介
加藤 大貴(外科医)
国立国際医療研究センター病院 外科にて食道外科医として日々の診療に携わる中で、チーム医療の在り方に課題を感じるようになった。よりよい医療の形を学びたいとの思いからJ-TOP Workshop 2019に参加し、その経験を経てJME2019に選抜され、MDアンダーソンがんセンターでの研修を経験。
Mission:「合併症の少ない食道がん手術で患者に貢献する」
Vision:「すべての消化管がん患者が生涯通して食べることができる世界」
JME(Japanese Medical Exchange Program)とは?
JMEプログラムは、J-TOP(Japan TeamOncology Program)が実施する海外研修制度です。
医師・看護師・薬剤師など、日本から選抜された多職種のメンバーが、米国のMDアンダーソンがんセンターやハワイがんセンターで数週間にわたり研修を行います。
現地では、診療の見学やレクチャーを通じて「患者中心のチーム医療」「キャリア形成」「リーダーシップ」を学び、さらに共同生活や最終プレゼンテーションを通じて国境や職種を越えたチームビルディングを体験します。
JMEで得られた経験は、帰国後に現場や教育の場で共有され、日本のがんチーム医療の発展に活かされていきます。
